学長
あれはそう、10年ほど前…私が大学生の頃の話だ。(なんか始まった)
私立の4年大へ入学し、ちゃらんぽらんな大学生活を送っていた。
よくいる普通の大学生だ。
大学1年生の夏頃、2コマ目の講義を終え、学食へ向かうと、さきほど講義してくれた60歳前後の教授が一人で学食を食べていたので、私は声をかけた。
「あ!先生、うっす!一緒飯食いましょ~」
その教授からはこちらが認知されているか不明だったが、嫌な教授ではなかったので隣に座って雑談しながらお昼を食べた。
そこで話が盛り上がって「先生、今日予定無いなら俺らと学校近くの居酒屋に飲みいきましょうよ~」と、めちゃくちゃ軽い感じで誘ったら「焼肉だったらいいよ」と、即日飲むことになった。
これが先生と私の出会いだ。
まさかあんなことになろうとは、この時は知る由もなかった。
飲みに行ってからというもの、とても仲が深まり、学食にちょこちょこ先生が居たので、毎回近くに行っては一緒に食事をした。
そんなこんなで大学3年になった。(早いのよ、すっ飛ばし過ぎなのよ)
ある日、大学の総合掲示板へ行くと人だかりができていた。
「おうおう、どないしたんや…」
そう思い、近寄ってみると、私は衝撃の事実を知ることとなる。
(う、嘘ぴょんだろ…誰か嘘ぴょんだと言ってくれ…)
そこには大学1,2年時から超仲良しである前述の教授が、4月から学長になったというお知らせだった。
私は衝撃のあまり、午後の授業をサボった。(通常運行)
帰宅後は友達と一日中、ウイイレやスマブラ、パワプロやマリオカートをし、ひたすらにその日を謳歌したのだ。(一番太字したらいかんとこ)
翌日、私は学長室へ向かった。
「すげぇじゃん!やったなぁ!」って言いたくて。(敬え)
すると学長室の前には警備員がいて、すぐには入れなかった。
「学長から呼ばれました!」
スーパー適当な嘘を付いても通される自信があったのだが…
案の定、通された。
学長室はバカみたいに広い。
本棚、机、ソファー、冷蔵庫……れ、冷蔵庫?あ、普通か…え?普通か?
まあいい。
壁には、額縁に入った歴代の学長がずらっと並び、威厳のある顔でこっちを見ている。
学長に早々にお祝い&挨拶を済ませ「学長、飯行きましょう〜」
いつものノリで普通に誘って学食に行った。
今までは教授とお昼だったので分からなかったが、この「学長との学食」は本気で楽しい。
「うわ!学長じゃね?学長じゃん!」って学生の皆がなる。
いつも口うるさい教授も、すれ違い様に「あ、学長、こんにちは…」ってなってる。
それだけじゃない。
学長の特権でなんと学食420円(学生証提示で320円)が無料だ!(てか、安すぎ)
極めつけはこれだ…
今回もいつものおばちゃんに、いつものように「大盛で!」と伝えたのだが、大盛でなく明らかに特盛なのだ。(学長効果…これが社会というものか…)
それからというもの、週1で学長室へ向かい続けるといつの日か看守も「うっす」で通してくれる「顔パス状態」になった。
そんなある日、学長に言われた。
「学生は学長室に誰一人として入ったことは無いよ、Aくんはすごいね。というか、さっきソファーで寝てただろう」
そう、何を隠そう…
私は…
学長室で一コマ(90分)寝たことがある、自称「伝説の学生」だ。
そんな学長は、3年時の1年間のみ、学長業に加え、講義、そして自分のゼミまで持っていたので、私は迷うことなく講義もゼミも学長を選んだ。
学長の講義は素晴らしい。
15回中、10回出席しなければ単位を貰えない中…
2回の出席で単位くれた。最初と最後だ!(ちょろい)
学長の専門は食料流通学。
講義で記憶に残ったことは…
何一つありませんでしたっ!!!
そんな学長ももう、今は70歳くらいだ。
大学を卒業してからも「Aくん、最近ね~、和牛のお店ができたみたいでね…」と、年に1回は焼肉を奢ってくれていた。学長は専門が「牛肉」のせいか、和牛とオージービーフに目がない。
今でこそコロナでだいぶ会えていないが、昨年ついに学長を退かれ、昨年秋の叙勲において「瑞宝中綬章」を受章された。(凄さ分からんけども)
そのお祝いに、自宅までドライフラワーを送りました。
そうです…
くしくも「優里」の「ドライフラワー」のリリース時期と被りました。(いや、知らん)
また、コロナ明けにでも飯行きましょうや、学長('ω')ノ
自分…大人になったっす!(静かにしろ)
おしまいっ♪